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生きたいと想って。生きたいと願って。だから生きているのだと思えるこの場所で――
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[ 出遭い ]

 自分が“周り”となんとなく違うなっていうのは気付いていた。
 気付いていたけれど、だからなんだ、って感じだった。
 別に間違ったことをしてるわけじゃないんだから、て。むしろ意地になっていたような気がする。だけど意地だけでやってきたわけじゃない。
 誇りだって、ちゃんと持っている。その形が、“周り”とちょっと違うだけで。
 だから。
「あーら。ごきげんよう、シンデレラ。灰かぶりのお姫様が、こんなところに何の御用?」
 どうしよっかなあ、これ。なんて。考える。
 無視するのが良いか。言い返してやるのが良いか。
 とりあえず気分が悪いことにかわりはない。
(これでもたぶん、機嫌が悪い時だったら確実に嫌味で返してたでしょうねー)
 自分が殊勝な性格をしているとは思っていない。相手もそうだろう。ただ、自分よりも下だとは思っているようで、こういう態度を取る。別に自分は、彼女の上にも下にも立ったつもりはないのだが。だからといって、隣に並んでるつもりはないが。
 強いて言うなら、そう。立つところが違うのだ。たとえ舞台が同じでも。舞台が同じだから、こうして勘違いをされるのだけれど。
 ほんと、うざったいなあ。これだから社交界は好きじゃないのよねぇ。と考える。まあ別に嫌いでもない。美味しい物食べれるし。
「なんとか言ったらどうなのかしら!?」
 痺れを切らしたらしいオジョウサマに、無表情を見せてみた。正直なところ、人間の表情の中では、これが一番“恐い”と思う。笑顔の下に隠れる怒りでも、周りの雰囲気でわかる。けれど無表情は違う。何かを考えているのかさえ伝わらない。だから、恐い。現に相手も、怯えている。
 ―――尤も彼女の場合は、自分がそんな態度を取られてたことがないから、戸惑っているだけかもしれないが。
「な、なによ…」
 でも何か、段々と腹が立ってきた。もしかすると自分で思う以上に、機嫌が悪かったのかもしれない。
「なんとか」
「は?」
 ぽかんっと口を大きく開いた女に、にこっと笑ってやった。
「あら。貴女が仰ったのでしょう? なんとか言えって」
 だからってその通りに言う人間なんて稀有だろうけどね。と自分が先程その“稀有”の中に入ったことは棚に上げて考える。
「それは――」
「ああごめんなさい。わたくし急いでいるの。それでは失礼しますわ」
「は? ま…待ちなさいよ!」
 後ろで聞こえた静止の声には、全く応じなかった。なんか後ごちゃごちゃと言っていた気がするけれど、聞く気がなかった所為か、頭に入ってこない。
 
 でも流石に、会えば決まってそういうことを言われるようになってからは、顔ぐらいは憶えたけれど。

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